華鬼関連の二次創作小話を掲載しております。
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いぢわる響。
土佐塚桃子は本人がいうほど不細工でもないと堀川響は思っている。
美人ではないが、くるくると動く表情は見ていて飽きないし、
誰にも媚びようともしない強気な姿勢は気高くもあり、どうすればそれを取り崩せるのかと策略をめぐらすのが楽しいのだ。
それ意外にも世話好きという点があり、なんだかんだ文句をいいつつも、きっちり響の分の食事は作ってくれるし、身の回りのこともよく気にかけてくれる。
美人というだけで持て囃される花嫁たちとは全く違う魅力が桃子にはあり、響はそれら全てを気に入っていた。
共犯者だった頃もお気に入りだったが、あくまでも駒である前提だったので、お気に入りのものを壊せばさぞ楽しかろうと漠然と思ったこともあった。
しかし、現在の思いは全く違った方向のため、“壊す”という概念すら抱かなくなったように思う。
“大事なモノ”から“大事なヒト”へ。
変わった二文字は重みを変え、響の心の中を静かに変革していった。
しんしんと積もる思いは温かく、守りたいと強く思わせる。
表には出さないけれど、殺戮だけを願っていた頃より遥かに瑞々しく潤う心は、きっと桃子がいなければ終ぞ持てなかったものだろうと、響は目の前に座っている桃子を見た。
「……な、なにか用?」
響の視線に気づいた桃子は、視線にたじろぎながらもそれでも強気な態度でこちらに臨んでくる。
響が桃子への好意を明るみに出してからというもの、以前のように毒づくことはなくなったが、相変らず睨みつけてくることは多々あった。
しかしそれも照れに裏付けされているらしく、頬をほんのり染める赤色は落ち着かなげに色を変える。
そんな様子が面白くて、上機嫌になった響は一つ爆弾を投下する。
「……いや、桃子はかわいいなと思って」
そう言うや否や、みるみるうちに桃子の頬の赤味が全身に行き渡り、耐え切れなくなった桃子はダンッとその場に立ち上がり指を指して、
「ひ、響の馬鹿!!!」
というと、一目散に奥の部屋へ引っ込んでしまった。
からかわれる行為自体は慣れっこらしいが、どうやら好意を全面に出した揶揄にはとことん免疫がないらしい。つくづく面白い女だと忍び笑いを漏らして響は立ち上がる。
さてどうやって、お姫様の機嫌を直そうか。
考えを巡らしながら、響はゆったりと桃子が隠れた部屋に向かった。
Fin
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