忍者ブログ
華鬼関連の二次創作小話を掲載しております。
2025/05月

≪04月  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31  06月≫
[13]  [19]  [12]  [10]  [11]  [9]  [8]  [7]  [6]  [5]  [4
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

華鬼×神無、響×桃子話第三弾的な。この4人大好きです。大好きですとも。別冊発売記念のSSアップされるのが楽しみすぎて夢に出てきてしまうほど(を)
とりあえず本編どぞ。


車のドアが閉じるバタンという音と共に、朗らかな声が辺りに木霊した。
「神無!」
大きく手を振ってこちら側に向かってくるのは神無の唯一無二の親友である土佐塚桃子である。
「土佐塚さん!」
姿を見るなり、待ちきれずに駆けて行く神無の後姿を見て自然と口元を緩めた華鬼だったが、しかし桃子の後ろからやってくる男の姿を見るなり、知らず口元は引き締められた。
 
ムジナの視点
 
ゆったりとした歩調でこちらに来るのは、堀川響。いつかの事件の元凶である鬼で、正に宿敵である男だ。何がどうしてそうなったかは知らないが桃子と一緒になったらしく、桃子が神無に会いに来るたびに必然的に付いてくる。
どうやら桃子に止められているらしく、直接的な被害はないのだが華鬼に対する敵意は相変らず健在で、会うたびに一触即発に近い空気を作るのはもはやいつもの光景と成り果てていた。
 
今回もいつもと同じように敵は不敵な笑みを湛えているのかと思って憎々しげに見やると……
意外なことに、響本人からいつものような敵意が一切感じられないことに驚く。
普段なら、挑発するように華鬼に向かって笑む男は、今日に限っては華鬼を一瞥しただけですぐに桃子の方に視線を移していた。
どういうことだ?と訝しむと、横からふいに違和感のある香りが漂って来た。
覚えのある臭いに思わず花嫁達を見やると、神無が心配そうに桃子に向かって口を開いたところだった。
「土佐塚さん、つわり……大丈夫?」
「大丈夫大丈夫!昨日は酷かったけど今日は全然ないから!」
眉根をよせて真剣な表情で見つめる神無に事も無げに答えた桃子の言葉で、
そういえば彼女が妊娠したという話をつい先日神無から聞かされたことを思い出した。
相手が相手なだけに素直に喜ぶことができなかったのだが、神無がとても嬉しそうだったので、まあいいかと思ったことを覚えている。
となると、宿敵が大人しいのは初めて妊娠した花嫁のことが気がかりだからだろうか。
携帯をいじりながらもちらちらと桃子の方に視線を移す響を見て、珍しいこともあるものだと華鬼はいつになく複雑な表情になった。
 
それからいつものように、神無と桃子がお喋りに興じる傍ら、彼女達を花嫁にする鬼二人は大人しく座っているだけ……の状態に収まったのだが、どうにも華鬼は落ち着かなかった。
それもこれも、いつもなら程度の差こそあれ常に敵意を剥きだしにしてきた宿敵が、嘘のように全く敵意を見せないからだ。それどころか華鬼の方を見ようともしないほどの徹底振りで、常にいらぬ私怨を向けられたきた身にとっては喜ばしいを通り越していっそ不気味だった。
そんな華鬼の様子を見て心配になったのだろう。桃子がトイレに立ち、響がそれを追う形で一旦席を外したのを見計らって、神無がそっと華鬼に語りかけてきた。
「……華鬼、具合悪い?」
心配そうに上目遣いで訊ねてくる神無に自然と頬が緩む。
「大丈夫だ……少し、気になることがあってな」
「あの人の、こと?」
微笑んでそう濁したが、勘のいい彼女は気づいたようで、響の背中を見つめて一言そう呟いた。
途端、胸の中の不快感が増す。多分それは宿敵を見ている神無という構図が自分の中で最悪な取り合わせだからだろう。しかし気にしすぎても仕方が無いことを十分に分かっている華鬼はとりあえず頷いた。
「……まあな。今日は奴があまりにも大人しいんで……調子が狂う」
素直にそういうと、そうだね、と神無も同意した。
「不思議……だよね」
華鬼の腕をきゅっと握ってそういう彼女に、不思議と言うよりは気持ち悪いと言おうとしたが、
その前に桃子の姿を見て開きかけた口を噤んだ。
「お待たせ!ごめんね。ちょっと最近、近くてさ」
言いながら桃子は神無の隣に座る。それからまた再会される会話に、よく飽きないなと半ば呆れながら耳を傾けていると、ふいに響が立ち上がった。かと思いきや桃子の腕を掴んで今にも歩き出しそうな体勢で一言言い放った。
「桃子、帰るぞ」
今まで見たことも無い、余裕など微塵も感じさせない表情でそうのたまった響に呆気に取られていると、腕を掴まれた桃子が狼狽するのが見えた。
「え、でも」
「お前、かなり具合悪いだろ」
ぴしゃりと放つ言葉には一切の迷いが無い。
しかし、彼女は現に笑顔で今まで神無と話していたのだ、楽しげな様子こそ伝わってくるものの、具合が悪い風には一切見えず、響が何を見てこんな判断を下したのか華鬼には皆目検討もつかなかった。
しかし言われた本人は図星だったらしく、徐に目を伏せると気まずそうにぼそりと呟いた。
「……少しだけ」
「嘘をつくな」
しかし、響はそれすらも一蹴して、じっと桃子を見た。
「お前のことなんだ。俺が分からないはずがない」
何を持ってそう断言するんだと言いたくなるほどの強い自信に裏打ちされた台詞には、揺るぎなど微塵も見えない。あまりの意外な言葉にただただ驚いていると、観念したらしい桃子がため息をついた。しかし尚も諦めきれないようで、掴まれた腕は宙ぶらりんのままベンチに居座っている。
「……折角神無に会えたのに」
上目遣いで見上げる瞳には懇願が含まれていた。それを察したのであろう響はやれやれと嘆息した。
「……いつでも連れてきてやる。だから今日は帰るんだ」
先ほどとは打って変わった、困ったような声音で諭す響の声に桃子はやっと納得したように頷き、立ち上がる。するとやはり相当具合が悪かったのか、立ち上がったすぐ後に倒れこむように体勢が崩れ、響の腕の中にすっぽりと収まった。
ごめんとか細い謝罪を放つ桃子に、無理するなと告げる響の声は驚くほど……本当に声を発したのは本人かと問いただしたくなるほど……優しいものだった。
桃子は安心したように頷くと、抱きかかえられたままの状態で神無の方を向き、辛そうな顔を精一杯の笑顔に変えた。
「ごめん、神無。折角会えたのにこんなになっちゃって……また、今度来るから……またね」
どういえばいいのか分からず、ただ頷く神無を見るやいなや、響は荷物を持つとくるりと踵を返して歩き出す。
「じゃあな」
思い出したようにそう告げて、響はそのまま振り向きもせずに車のある方向へと歩き出していった。
発進した車が見えなくなってからようやく華鬼は自身が固まっていたことに気づく。
隣を見ると神無も同じような状態で二人が去った場所を凝視しており、
表には出さないがこの一連の出来事に相当驚いたということが手に取るように分かった。
体調の悪さを全く表に出さない桃子も凄いが、それを見抜く響は驚きを通り越して畏怖すら覚える。
人を人とも思わない冷徹で残酷な男。その認識で間違いないはずなのに、
自らの花嫁の機微には誰よりも敏く、まるで壊れ物を扱うように大事にしている。
本当にあいつは見知っている宿敵だったのだろうか。
考えにふけっていると、横にいる神無の肩が少し強張ったのが見えたので、思考を中断した。
「……寒いのか?」
「……少しだけ」
短く問うと、短い返事が帰ってくる。以前麗二に、淡白すぎますねぇと笑われたことがあるが、
神無との会話はこれだけで十分に気持ちが伝わってくるから問題ないのだ。
風も冷たくなってきたので、そろそろ家に入るかと無言で神無を促した際、そこでようやく、敵の先ほどの行動と自分の行動が同じであることに気づく。
つまりは、本当に大事で一緒にいる時間が長いからこそ、よく相手を見るようになり、他人が見ても分からない機微で相手のことを察知できるようになるのだ。
華鬼が神無に対してそうであるように、響は桃子に対してそうなのであろう。
結局自らの花嫁に弱いという点ではどうやら宿敵と全く同じであるらしい。
あまり面白くない事実に顔をしかめると、
華鬼の変化に気づいた神無が心配そうに見つめてきた。
「……なんでもない」
華鬼は不機嫌な顔を慌てて引っ込めて、ぽんぽんと神無の頭をなでる。
面白くはないが、事実は事実。
結局、鬼が花嫁に弱いというのは真実なのだなと、自分と、そして宿敵の姿を見て、しみじみと思った。
 
fin
 
 
 
◆ムジナというのは同じ穴のムジナ、から来ています。
 結局最終的には華鬼も響も同じだよねということで。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret (管理人だけにコメントする。)
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新コメント
[11/13 canon eos 600d kit]
[08/21 NONAME]
[05/17 たふあ]
[05/16 NONAME]
プロフィール
HN:
たふあ るるく
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
カウンター

Copyright © アナフト四番舘 All Rights Reserved.
Material & Template by Inori
忍者ブログ [PR]