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華鬼関連の二次創作小話を掲載しております。
2025/05月

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誰得ですか?と聞かれたら『俺得ですが何か(`・ω・´)キリッ』と宣言しよう!…華鬼と京也の話です。逆親子同士の話ってのも見てみたいなと思いつつ。


『じゃんけんぽん』
あたたかな木漏れ日が差し込む大木の下、少年少女3人が古来から伝わるじゃんけんの合言葉を口にして思い思いの手を出した。
「あ、華が鬼だね」
「え~また!?なんで二人ともじゃんけんそんなに強いのよ!」
目の前にいた優しげな風貌の少年……神楽があどけなく言うと、
少年に似てはいるが気の強そうな顔の少女……華がぷうっと顔を膨らませる。
「華が弱いんだろ」
不満げの少女にやれやれと肩をすくめた京也は、ふと、視線を感じて上を見上げる。
視線の先には歴代最高と謳われる鬼が窓辺に立っていて京也はまたかと胸中で呟いた。

かくれんぼ


華と神楽の母親である神無が、不規則な眠りにつく異常な体質になってからというもの、二人の気を紛らわせるためなのか、京也はよく両親に連れられて屋敷に来るようになっていた。
元々鬼の子として生まれた京也としては、力などの関係上、手加減をせねばならない人の子と遊ぶより、同じ鬼の華や神楽と遊んだ方がよっぽど楽しいので問題はないのだが、ここに来ると必ずといっていいほど、密かに何度も向けられる視線には正直辟易していた。
その視線の人物も、何故その人物が視線を向けてくるのかも分かってはいるのだ。しかし、立場が立場なため、話しあえる訳もなく、今までこうしてきている。
いい加減勘弁してくれと思った矢先、目の前の華がズビシッ!と指を立てたのを見て現実に引き戻された
「今度こそ京也を見つけてやるんだからね!」
「見つけられるもんなら、見つけてみな」
「いいもーんだ、絶対絶対、今度は負けない!じゃあ50数えるからね!」
そういうと華は大木にもたれて、いーち、にーい、と数を数え出した。
先ほどから、かくれんぼの鬼になり続けているにも関わらず京也を見つけ出せなくて連敗中の華は
躍起になって勝とうと奮闘している。
こんなことで熱くなるなんてなと思いつつ、負ける気もない京也は、神楽の呆れたような苦笑を無視して走り出した。

かくれんぼのルールは簡単。隠れた人間を、制限時間内に見つけられたら鬼の勝ち。
隠れる場所は、外だと選定委員などの脅威があるため、屋敷内のみ。
屋敷内は神楽と華の方がよっぽど熟知しているのだが、京也はその隙を見つけるのがとても上手いので、今まで負けたことはない。
しかし、大分この遊びもやりなれて来たため、隠れる場所も次第に無くなってきているのが現状だった。
今度はどこに隠れようかと思案を巡らせていると、50!と叫んだ華の声が聞こえた。
「……あいつ、数えるの早えよ」
連敗中の苛立ちからか、数えるスピードが最初の時と比べると倍速になっている華に嘆息し、京也も駆け出す。
どこか上手く隠れる場所はないか……走りながら場所を物色していると、
いつもは施錠されている細いドアが今日に限って開いているのを目にした。
瞬時に、ここはいい隠れ場所になると判断した京也は滑り込むようにドアの隙間に入り込み、ドアを閉めた。ふうと一息つくと、異様な力の気配を感じてすぐさま振り向く。
すると、そこには怪訝な顔をした鬼頭……木藤華鬼が立ち尽くしており、京也は驚きに目を見開いた。
「……何をしているんだ」
恐らくは花瓶であるだろう容器を手に、不思議なものを見るような瞳で語りかけてくる華鬼に、京也は短く答えた。
「……かくれんぼ」
短い答えに若干の戸惑いを覚えたのか、しばらく逡巡した華鬼は、そうかと呟いて、止めていた手を動かし始めた。
場をなんとも形容しがたい空気が覆ったが、別段拒絶はされていないようだったので、京也は周りにあるものをしげしげと眺めた。
どうやらここは用務室か何かであるらしい。花瓶の他にも小皿や容器、テープなどの品々がぽつぽつと置かれている。興味深そうに辺りを見渡していると、意外にも華鬼から再び声をかけられた。
「……華が、鬼なのか」
主語が抜けた問いだったが、京也にはすぐにかくれんぼのことを指していることが分かったので素直に頷いた。
「そう、華が鬼でずっと連敗中。俺、隠れるの上手いから」
その言葉に反応した華鬼が反射的にこちらを見る。
その瞳は、いつも、屋敷に来るたびに京也に向けられる、困惑と、拒否と、それでも容認しようとする複雑な感情が絡んだ視線と同じものだった。
その視線を向けられる理由を、京也は知っている。
二人で話すことなんてないから諦めるしかないと思っていたが、これはいいチャンスかもしれない。そう思うと同時に口から言葉が出ていた。
「華鬼は」
じっとこちらを見ていた華鬼が僅かに狼狽するのを見て、そういえば華鬼の名前は、本人を目の前にして言うのは初めてかもしれないと、言いなれずにしっくり来ない名前を再度反芻した。

「華鬼はさ、俺のこと、いつも見てるよね。そんなに心配?俺の父親が響だってこと」

濁したかったけれど、どうやって濁すことができるのかが分からなかったので、単刀直入に思っていたことを口にした。
すると、華鬼は一瞬虚をつかれたように目を見開き……その後、すぐさま嘆息してこちらに背を向け、
中央にある寂れた水道から、花瓶に水を満たし始めた。
「……逃げるの?」
しばらくしても返事をよこす気が見えない華鬼に、京也が毒づくと、
満たし終えた水道の蛇口を絞りながら、華鬼から言葉が紡がれた。
「心配でないといえば、嘘になる。
堀川響は、紛れもなく俺の敵だ。馴れ合うことはできない鬼だ」
淡々と紡がれる言葉には、何の感情も映している様には見えないが、
その実、理性で抑えているのだろう。淡白な言葉はそれ以上の感情を押し殺していることを如実に示していた。
子供ながらに、この質問はするべきではなかったと後悔した矢先、振り向いた華鬼の顔を見て京也は息を呑んだ。
「……だが、お前は同時に、土佐塚桃子の子だ。神無の、唯一の親友の、子供。
 そして、華と神楽が大事にしている、友人。
 お前は知らないだろうが、お前が帰った後は二人して随分寂しがるんだ。
 それくらい、お前のことが気に入っているんだろう」
そういって目を伏せた華鬼の顔は困惑に満ちていて、けれど、どこか優しげで、
それは京也にも見覚えのある、子供を思う親の姿そのものだった。
「だから、お前自身には、寧ろ感謝さえしている。華と神楽が楽しそうにしているのを見られるからな。
 ……けれど、お前の容姿は本当に……あの鬼に似ているから、
 たまに複雑になるんだ。気を悪くしたらすまない」
そう言って、謝罪の言葉を述べた華鬼に、不覚にも京也は固まってしまった。
確かに、華鬼の視線の理由は父親同士の確執から生まれているものだとは理解していた。
だから、この質問をすれば、間違いなく拒絶の言葉が出てくると思ったのだ。
しかし、予想に反して、華鬼本人の口から紡がれたのは、感謝と謝罪の言葉のみで、
完全に虚を疲れた京也はどのような反応をしていいか分からなかった。
「……これからも、華と、神楽を頼む」
困惑して固まっている京也の横をすり抜けながら、華鬼は聞いたこともない優しい声音でそういった。
バタン、と閉じられたドアの向こうから、バタバタと駆けてくる音を聞いて、立ち尽くしていた京也はハッと我に返る。
『あ、パパ!京也見なかった?』
『さあ、見かけなかったぞ』
くぐもった声はまぎれもなくそう言っていて、
華が通り過ぎるのを確認してから、京也はそっと細いドアを開けて廊下を盗み見た。
探していた後姿は、威風堂々としていて隙が無い
「……ほんと、鬼頭って強いんだな」
一言そう呟くと、京也はずるずると壁際に座り込んだ。
隠れて、視線を向けてきたのは華鬼のほうだと思っていたけれど、
もしかしたら、その視線から隠れ続けていたのは自分だったのかもしれない。
華鬼の真意を知った京也は、知らず灰色に染められた天井を仰いで嘆息した。

fin

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